北海道立林業試験場 Hokkaido Forestry Research Institute

平成18年度北海道森づくり研究成果発表会(森林整備部門)
(2007年4月18日:美唄市民会館)
林業試験場の研究成果発表(口頭発表)に対する質問票への回答


当日のアンケート用紙(質問票)に記載された参加者からの質問への回答を掲載しました。

炭素固定能の高いグイマツ雑種Fの品種開発と効果の推定(育種科長 来田和人)
【Q1】一般発表部門でカラマツ長伐期施業についての発表がありましたが、来田科長の成果発表では森林の炭素吸収量はある程度の林齢で頭打ちになるとのことでした。温暖化の防止を目標とするならば、伐期を標準的な林齢とし、サイクルを早くした方が効率的なのでしょうか? 
【A1】樹木の樹幹部に貯蔵される炭素量が単位時間あたりで最大になる伐期齢は、植栽からある年までの年平均成長量が最大になる樹齢に一致します。「カラマツ人工林施業の手引き(2007)」によると、カラマツの年平均成長量が最大になるのは林齢約40年で、伐期齢をこれにあわせると炭素貯蔵量が最大になります。ただし、伐採した材が利用目的に見合った径級でなければ、貯蔵した炭素を無駄に大気中に戻す結果となりますから、利用目的も考慮して伐期齢を決定する必要があります。
【Q2】グリーム(グイマツ雑種F1の登録品種)を植栽した場合や、低密度植栽(1000本/ha以下)の場合には、炭素固定能は今回発表された結果と比べてどうなりますか?
【A2】グリームの単木炭素貯蔵量はグイマツ雑種F1全体の平均の3.9%増です。一方、今回の研究で最も有望だった中標津5号を母樹とする家系の単木貯蔵量は5.6%増となります。
植栽密度を500本/haとした場合の林分材積や林分炭素貯蔵量は、これらが最大になる植栽密度1500〜1600本/haに比べると、6割弱になります。植栽密度1000本/haでは8割強になります。ただし、利用目的に見合った径級の材を生産することを考慮すると、炭素貯蔵量を最大化するということだけで植栽密度を決定することはできません。
【Q3】今回の発表はグイマツ(G)×カラマツ(L)の雑種での結果でしたが、カラマツ(L)×グイマツ(G)の人工交配家系でも同様にCO2固定能力は高いでしょうか? もし高いならばL×Gでもよいのではないでしょうか。L×Gは球果が大きいので種子生産量もより多くなる可能性も考えられると思いますが、いかがでしょうか。
【A3】グイマツ花粉の飛散時期とカラマツ雌花の開花時期のずれから、一般的にL×Gの雑種率は低くなります。L×G苗木の雑種判定も難しいため、L×Gの事業化は困難です。また耐鼠性に関しても、L×Gはカラマツにやや近く、G×Lのほうが優れています。このような理由からL×Gの材密度を測定しておらず、L×Gの炭素固定能は高いと予想できますが、実測データはありません。
【Q4】グイマツ雑種F1について、ラジアータパインに類似した材質特性をもつ家系が見つかったとの説明がありましたが、この点について詳しく教えてください?
【A4】樹木の年輪には、密度が低い早材と密度が高い晩材があり、早材の幅が広いと材が軽く弱くなる傾向があります。ニュージーランドでは、成長だけでなく早材の密度が高いラジアータパインの品種改良に取り組み、成功しています。この品種は早材が重たいため年輪幅が広くなっても(すなわち早材幅が広くなっても)、材の密度や強度が低下しにくい特徴を持っています。そのため、ヘクタール当たり1000本以下の低密度で植栽し、25年で胸高直径40cmの木材を生産することが可能となっています。また早材密度と晩材密度の差が少ないため、品質のよい合板用単板を生産することができます。遺伝的な改良に加え、施業面においても早くから枝打ちを行い無節の合板用単板を生産する工夫がなされています。グイマツ雑種F1においても、このような特徴を持つ系統が見つかっており、普及に向けて検討を進めているところです。
【Q5】グイマツ雑種F1の優良家系の苗木生産の将来目標を年間30万本とするとうかがいましたが、この目標を達成するまでの年数的な目途や生産コストはいかがでしょうか?
【A5】平成18年度から民間ベースでスーパーF1(中標津3号と5号を母樹とする家系)の造林が開始されましたが、まだ生産本数は約2万本/年と少ない状況にあります。今後、10年間をめどに年間30万本の生産を達成するため、11社の苗木生産者を対象にさし木苗木生産の技術移転を行っているところです。コストについては、道立林業試験場と北海道山林種苗協同組合の共同研究で5000本のさし木苗木を生産したときのコストは62円/本でした。ただし、これは直接経費のみで、ビニールハウス等の施設償却費は含まれていません。北海道山林種苗協同組合では、スーパーF1の価格を1本あたり135円(税抜き)に設定しています。現在、林業試験場では、生産コスト削減を目的としてさし木技術の改良に取り組んでいるところです。
【Q6】スーパーF1について新聞報道で知りました。このスーパーF1の入手方法について教えてください。
【A6】スーパーF1の生産量には限りがあるため、現在のところ、国有林、道有林、市町村有林、研究教育機関などの公的機関のほか、低密度植栽など先導的な施業方法を取り入れ、周囲の見本となるような取り組みを行っていただける方に優先してスーパーF1を販売しています。植栽を希望する方は北海道庁水産林務部森林整備課保護種苗グループ(Tel011-231-4111 内線28-629)に相談してください。

森林の台風被害を軽減するには (防災林科長 鳥田宏行)
【Q7】防風林の耐風性を高めるためには、立木密度が低い方が良いという結果を報告されましたが、防風林の機能を維持するには、ある程度の本数も必要だと思います。防風林の機能と耐風性を両立させるにはどれくらいの密度が適当なのでしょうか?植栽時からの密度管理についても教えてください。
【A7】樹林帯の防風効果は、本数密度(正確には疎密度)と林帯幅によって左右されます。したがって、幅の広い防風保安林では、多少本数密度が低くなっても、防風効果は維持できます。今回のカラマツ防風林の調査結果からは、35〜45年生に達するまでに500本/ha以下ぐらいまで密度を低下させれば、耐風性も向上すると考えられます。また、適正な植栽密度については、間伐回数に大きく依存します。もし間伐回数を少なくするならば、植栽密度は低めに設定して、上記の本数密度に近づける施業を行う必要があるでしょう。
【Q8】限界風圧について、形状比(H/D)および枝下高との関係を示されましたが、横方向の枝張(樹冠幅W)についての形状比(W/D)と台風被害との関係はどうなのでしょうか?
【A8】樹冠に関しては、被害を大きくする要因として樹冠の偏りがあります。枝葉が幹を軸に対称性を持っていないと、幹には曲げモーメントのほかにトルク(ねじれ)が生じ、幹に大きな負荷がかかります。また、風以外でも、冠雪などを受けたときに、非常に被害を受けやすくなります。
【Q9】幹の強度が強くなると台風による被害はどのようになると予測されますか?
【A9】幹の強度が強くなると、立木の被害形態としては幹折れ被害よりも、根返り被害が多くなると予想されます。幹折れ・根返りなどを含めた全体の本数被害率は、幹の強度、倒伏抵抗モーメント、倒伏モーメントなどの相対的な大小関係に依存しますので、全体の被害率の変化を幹の強度だけで推測することは困難です。

植生を失った荒廃海岸における海浜植物の導入試験 (緑化樹センター主任研究員 清水 一)
【Q10】海浜での土壌改良や塩風害防止に有効な植物はないでしょうか?
【A10】チッソや腐植原料を供給することによって土壌改良効果の期待できる植物は各種ありますが、海浜植物に限ると特定のものはありません。ただ、海浜のそれぞれの立地条件に適して繁茂している植物は、土壌への有機物等の供給量も多くなるため、一定の土壌改良効果があると期待されます。塩風害を防止する植物としては、ある程度の高さをもって生育することと、空中の飛来塩分をできるだけ多く吸着する構造をもっていることが条件になります。海岸の天然林(たとえばカシワ林やミズナラ林)では、たくさんの小枝を持った樹木が集団で生育しており、このような状態が空中の飛来塩分吸着に効果があります。

なぜ 海外の園芸苗木は素敵に見えるのか? (管理技術科 研究主任 錦織正智)
【Q11】良い緑化樹苗木を持っている地方の苗木業者はどのような方法で市場拡大を図ったらいいでしょうか?
【A11】苗木業者さんの手元に商品化候補の樹木(選抜個体)が既にあることを前提としてご説明いたします。
対象の個体を増やすことが商品化への第一歩です。対象個体と同一のモノを増殖するには、組織培養・接ぎ木・挿し木の3つのクローン増殖方法から選択します。今回の成果発表会でご紹介した組織培養によるクローン苗木の受託生産は、道内2社(空知管内と上川管内)が行っています。苗木業者さんがクローン増殖を委託する場合、手間は対象個体の枝を切り取り、これを郵送するだけです。また増殖を終えたクローン苗木の養苗についても、農協(空知管内)に依頼することが可能です。選抜を実施した翌シーズンには苗木の増殖は完了します。
道内業者さんのクローン苗木の販売方法を見ますと、自社のみで実施する方法と、本州などの他の業者さんと連携する方法をとられています。海外におけるクローン苗木の生産・流通の傾向をみますと、増殖を実施する苗木業者さんは、他社へ苗木を販売することで苗木を手元にとどめておく期間(販売までの期間)を短くして、回転率を高め、新商品(品種)の投入するサイクルを短くするようです。

森林所有者と森林ボランティアの連携を進めるには (保健機能科 青柳かつら)
【Q12】森林所有者へのボランティア受け入れに関するアンケート結果について報告されましたが、回答そのものが少なく、また受け入れるかどうかわからないという回答も多かったので、ボランティアを受け入れることのメリットをもっとPRしたり、受け入れたことによって森林が良くなった事例などを森林所有者にもっと提供するとよいと思います。またボランティアが普及するまでには、行政のおすみ付きのようなものも必要だと思います。これらについてはいかがでしょうか?
【A12】ご指摘のように、両者の連携を進めるには森林所有者への適切な情報提供が重要です。すなわち、ボランティア受け入れ意志の形成には特に「地域ぐるみの森林づくり」への意向が影響していた結果から、この考えを下敷きに市民が地域の森林整備に取り組む理由や背景を所有者に説明し、ボランティア活動の実例とその成果を伝えることが有効と思われます。また、ご指摘のような行政の「お墨付き」、仲介役の事例としては、道の施策「北の里山」登録制度があります(http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/srs/sinsei/010202.htm)。こうした制度の効果的な運用には、行政は上記のように所有者の不安を払拭する情報提供に努めること、そして受け入れ意志を持つ所有者であっても、所有林の提供には様々な条件を想定していた結果を踏まえ、両者の要望を十分に調整し、合意形成を促すことが重要と考えられます。

発表課題を特定しないご質問
【Q13】
1.生業として林業経営が成り立つためにはどれだけの面積の山林が必要でしょうか?
2.現在、市場価値の高い樹種とサイズはどのようなものでしょうか?
【A13】
1.林業経営の収支には、地位・地利など立地条件、山林の樹種・林齢構成、販売方法や材価、経済動向など多くの要因が関わるため、林家として経営が成り立つ山林面積を、数値で示すことはたいへん難しいと思います。
ここでは、最新の統計資料(2005年農林業センサスなど)から関連する数値をご紹介して、北海道の林家の経営実態をご理解いただければと思います。まず所有規模については、北海道の林家(山林3ha以上をもつ家族経営の林業経営体)12、246件のうち、20ha未満が79%、50ha未満が94%を占めています。林業収入については、世帯収入の中で林業による収入が最も多い世帯は、全林家のうち85件で0.7%にすぎません。保有山林が20ha以上の林家1戸あたりの林業所得(収入−支出)の平均は17万6000円です(H16年)。
このように道内の林業経営の実態はかなり厳しい状況ですが、最近は木材市況に好転の兆しがみられます。林業試験場では、「林業の健全な発展を図る技術開発」を試験研究・普及指導の基本方向のひとつとして掲げ、持続的な林業経営や低コスト化を図るための研究を進めています。研究成果については、森づくりセンターなどと連携して現場に普及を図ってまいりますので、ご理解をお願いいたします。

2.木材の需要・流通動向や価格なども含めて、林業経営に関するご相談は、支庁ごとに設置されている森づくりセンター(普及課)でお受けしていますので、ご利用下さい。


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